間違いない名作

NHK ETV特集『ひとりと一匹たち 多摩川 河川敷の物語』(再放送)を観た。東京多摩川の河川敷に暮らすホームレスたちのドキュメント。ホームレスたちの生活を数か月にわたって追いかけている。
http://www.nhk.or.jp/etv21c/backnum/index.html

ひとりと一匹たち 多摩川 河川敷の物語

青いビニールテントに住むホームレスたちはどういう生活をしているのか、お金は稼いでいるのか・・・カメラは彼らを追う。

ホームレスたちは河川敷暮らしを「川に降りる」という。(逆に社会に戻ることは「丘に上がる」というらしい) 川に下りた彼らは、食べていくためにはお金を稼がないといけない。多くのホームレスたちはアルミ缶を街中から集めてきては売る仕事をしている。そのわずかなお金で弁当を買ってきたり、火を使った簡単な調理の生活。

住まいはビニールテントだから雨がしのげるくらいのものだ。布団にくるまって寝る。時には襲撃を受けるという。「ホームレスなんて死んでもいい」と思う人がいるのだ。

ホームレスの多くは捨てられた猫や犬と一緒に生活している。丘で普通に暮らす私たちが、「良い人に拾われるんだよ」「幸せになるんだよ」と不要になって捨てた猫たちである。社会からはじき出された自分と重ね合わせるように犬や猫たちに愛情を注ぐ。自分の食費を削っても猫の缶詰を買ってあげるホームレスたち。
今年になりアルミ缶の相場が昨年の1/4に落ちてしまい、それでは生活がままならなくなってしまう。不況が生活を直撃する。

ホームレスになってしまうのは優しすぎるのでしょう。社会生活についていけず、ドロップアウトしてしまうと、ナレーションが最後に流れる。

良いものを観た。世の中で、何が大切で何が間違っているかを考えさせられた。
常に弱者は心優しい弱者によって助けられる。

青森の津軽三味線の高橋竹山は、門付け遊芸人(※)をしていた。盲目の障害者であり、行く先々ですごい差別を受けていた。その中で唯一優しく受け入れてくれたのは、朝鮮部落民だったという。高橋竹山の姿に、被差別同士の想いが交錯したのだろう。朝鮮部落民への気持ちが後に名曲「アリランによる独奏曲」を産むことになる。弱者は常に弱者を助く。

『ひとりと一匹たち 多摩川 河川敷の物語』は3月29日午前1時から再々放送されます。機会があれば是非ご覧下さい。とても良い番組です。

話しは変わりますが、映画に出演しました。『オカルト』というホラー物です。
http://www.occult-movie.com/
インディーズのとっても面白い作品です。
あの撮影がこんなになるんだ!と自分でも驚きました。こちらも是非!
3月21日より渋谷ユーロスペースにて公開です。

オカルト

※一軒一軒三味線を弾いて歩く津軽の三味線弾き。家の中で弾くのではない。風が吹きすさぶ門の外から、中にいる家人に重い玄関を開けさせるために、その三味線の音は強くなければならなかった。

  • 掲載画像はリニューアル時に編集者が追加

この記事を書いた人

A.T.のアバター A.T. 監督・プロデューサー

たかつき あきら 1982年中央大学文学部卒
宇宙企画の制作、ピンク映画の監督等を経て、制作会社4D(フォーディー)に入社し風俗情報AV等を制作。その後、共同経営でカンノン・シネマワークスを立ち上げリアルなエロを引き出す淫乱系ドキュメント派監督として知られる様になる。共同経営者が病気で倒れたため、シネマユニット・ガス(通称GAS)を設立。セルビデオ転換期に「爆乳」を主軸とした作品群をリリースし、爆乳系監督の第一人者となる。