味噌ってクセになりませんか?

会社はコリアンタウンのはずれにある。どこのレストランに行っても本場の韓国料理が楽しめる。

ときには抜きんでた美味しい店を発見するときもある。路地を入ったところにあるその店は出来たばかりだったが、味噌チゲがたまらなく美味しかった。元々赤だし味噌汁が好きだったので、その田舎味噌にすぐはまった。会社帰りに何度となく通うことになった。

出来たばかりのその店に行った時のことだった。こじんまりとした店で、この辺りはどこもそうだが店員は全員が韓国人だった。40代の女主人と二人の若い女性店員がいた。席につくなり、女性店員にいきなり言われた。

「あなたテレビにでてるでしょう!わたしみたことある」と自分に言ってきたのだ。一緒の会社の人と顔を見合わせた。テレビ? 確かにビデオ(AV)には出演したことはある。そのことを言ってるのか・・・

誰かと間違えてるのか、AVをテレビと勘違いしているのか、受け流していたら色紙をもってきた。まあいいや、と思いながら自分のサインをしてしまった。

後日、その店に行くと自分のサインが、韓国のスターらしき人の隣に飾られていた。不思議なもので自分のサインが飾られるとその店に情が出てくるのだ。その後何度も通うことになり、店の変遷を見ていくことになる。

サインを求めてきた若い女性店員はすでに辞め、料理人が別の女性に代わっていた。味が普通になっていた。女主人に、味が変わったことを言ったが元に戻ることはなかった。

一年半が過ぎたころ、日本人の店員に代わっていた。スタッフが代わったことを聞くと、「ここを切り盛りするのも大変なんです」みたいなことを言う。そこまで聞いていないのに、聞きたくもないことを聞かされたようで、それから足が遠のいてしまった。

その半年後くらいで店が変わってしまった。オープンして二年くらいだった。

あの味噌の味は本当に良かった。店は10年もてば一人前というが、同じ味を続けるのは本当に大変なのでしょうね。諸行無常を感じたのでした。

  • 掲載画像はリニューアル時に編集者が追加

この記事を書いた人

A.T.のアバター A.T. 監督・プロデューサー

たかつき あきら 1982年中央大学文学部卒
宇宙企画の制作、ピンク映画の監督等を経て、制作会社4D(フォーディー)に入社し風俗情報AV等を制作。その後、共同経営でカンノン・シネマワークスを立ち上げリアルなエロを引き出す淫乱系ドキュメント派監督として知られる様になる。共同経営者が病気で倒れたため、シネマユニット・ガス(通称GAS)を設立。セルビデオ転換期に「爆乳」を主軸とした作品群をリリースし、爆乳系監督の第一人者となる。