エトセトラ


 最近、玄米食を始めた。最大の理由は脳腫瘍の彼女の食事療法の付き合いである。健康にも良いそうで、確かに体調は良くなった。しばらく続けてみようと思っている。現在肺癌の親父にも勧めたけど、親父は嫌だと受け付けなかった。

 創刊号のこのコラムでも書かせてもらったが、「夢で逢いましょう」(宇宙企画)では両親や付き合ってる彼女など私のプライベートな部分を少し描かせてもらった。最近になって、物足りなさを感じるようになった。自分にしか撮れない、より突っ込んだプライベートを作品にしたくなったのだ。特には父である。自分と父との関係を残しておきたいーーー 私と父の関係はどこの家庭にも当てはまる普遍性があって共感も呼ぶだろう。もしかしたら面 白い作品になるかもしれない。俺にしか撮れないのだからやるしかない。そう思った。父が病気で苦しんでいるのによく撮影なんか出来るとか、自分の創作欲の為に父を利用とか、思われても仕方ない。監督なんてそんなものなのです。もし私が父の立場だったら子供の好きにさせます。黒沢明だって言ってます。「天使のように大胆に、悪魔のように繊細に」

 ストーリーはすぐできた。一応科学番組の体裁をとり、彼女が実践している食事療法(東洋医学)と父がかかっている医者(西洋医学)の違いと実証を試みる。で、ここが一番描きたい所なんだけど、父と私とのコミュニケーションに踏み込んでいく。お互いよく話す方じゃないから未だギクシャクしているのだ。自分が父にどこまで近づけるかがもう一つのテーマである。こういう内容だからAVでも映画でもなくTVでいきたい。けどTV関係者にコネなどないし、自主制作はプロの自覚のある自分としては嫌だし、どうしようかなぁなんて考えていた頃、ある告知が目にとまった。NHKの秋の中途採用の「ディレクター職」若干名! 単純な俺は「もうこれしかない」と心が躍った。AV監督でありながらNHKディレクター! 採用されてもAVは続けようと取らぬ 狸の皮算用状態。履歴にAV監督であること、先程の企画を書き添えて応募した。こういうのも変だが、絶対の自信みたいなものがあった。自分の中にある物を丁寧に出せば面 白くできる確信があったのだ。NHKからの採用通知を待った。が、なかなか来ない。忘れた頃に不採用の通 知が届く。ハッキリ言って落ち込んだ。チクショー、次は民放に売り込んでやる。どなたかこの企画に興味を持って「よし撮らせてやろう」という方、いらっしゃいませんか? そんな方はこちらまで。


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