「夢で逢いましょう」

宇宙企画 5月30、31日


最近、人恋しい。今年になって初めて中学の同窓会に行ってからである。なぜだかはよく分からない。ただ同窓会で一人で(心の中では)勝手に盛り上がっていた。70を越した親父は現在肺癌で、10年以上同棲している彼女は脳腫瘍になってしまった。それが原因の一つかもしれないし、他になにかあるのかもしれない。とにかく人恋しいのだ。そんな気分を作品にしたかった。その頃メディアステーションから仕事の依頼が来る。松井里穂という女の子だそうだ。面接前からテーマは自分の「人恋しさ」に決めていた。が、その娘は情深くて偶然にもテーマにピッタリだった。宝物は指輪。半年前まで付き合っていた高校の副担任の先生にもらったという。飾り気のない素直な性格にその先生に嫉妬してしまった。そんな私の気分を交えながらノスタルジーを描くことにする。


5月30日

私の実家(東京)のすぐ近くにある空き地。そこから撮影はスタート。よく木登りをした木がスパッと伐られていたのを最近見つけ「撮りたい」と思ったのがこの企画の始まりだった。その切り株を里穂に紹介する。彼女は何て言っていいか分からず戸惑ってましたが(笑)。家の近所を歩き、私の母校の中学まで来ると運動会をしている。私と里穂とカメラマンの三人で中に入って撮影してると父兄からの冷たい視線がビシバシ飛んでくる。若い女を連れた男たちがなにやら撮影してるんだから当たり前なんだけど。(いかがわしいことは何もしてないんだけど)居たたまれなくなって母校から出る。世間と俺たちのギャップにちょっと落ち込む。スタジオで里穂と私とのハメ撮り、ということにする。初めて二人きりになる。思い切って自分の気持ちを言ってみる。先生に嫉妬してること、好意があること。里穂は仕事ではなく女の顔になった。が、実は私は男優NGなのであった。オモチャを使ってお茶を濁す。せっかくいいところまでいったのに無念。(でもいい表情は撮れた。)

5月31日

また昨日の空き地から。今日はベーカム(プロ用カメラ)でイメージ撮り。いきなり俺の両親が通りがかる。AVの撮影とはハッキリと言えなかったが、里穂と並んで3ショットを撮らしてもらう。作品の中で「俺の両親」として使わせてもらう積もりです。なんか変な気分だった。モデルと一緒に親を撮るのは。

高校時代の俺と同級生の里穂という設定で再現Hシーン。実際の俺は女の子と話なんかできず童貞をなくしたのは20歳になってからだけど、それじゃAVにならないから。最後にスタジオで3Pを撮っておしまい。


里穂の撮影はこの二日間だが、「俺の人恋しさ」の撮影はまだ続く。昔好きだった同級生の女の子に会ったり、宝物の指輪をくれた先生に張り合おうと大学の時に取得した教員免許を探しに実家の自分の部屋に行ったり・・ この作品は今まで以上に自分を出した作品となる。いつもは当たり前のように女の子に根ほり葉ほりプライベートなことを聞いていたが、自分のことを出すのはやはり恥ずかしかった。里穂はなんでも話してくれました。北陸地方に住んでいて撮影のたびに東京に来ること、両親・地元のこと、現在でも先生に未練があること、AVのSEXはあまり好きではないこと・・・ AVに出る軽いタイプの女の子ではなく隣の妹みたいな感じなので撮ってて痛々しいものがありました。AVギャルとして世間に晒してしまうにはチト可哀想かなと。ホントはこの仕事を辞めた方がいいと思うんだけど。でも本人が望んでしてるのだから仕方ないけど。俺がAV監督になった15年前とはえらい違いです。誰でもAVギャルになってしまうのですから。


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